お茶の購入とテイスティング

量り売りの紅茶でもない限り、今日スーパーの市販品にしても、紅茶専門店の品にしても、包装紅茶である事に違いはない。スーパーの安い市販品ならはずれを引いても、まだしも諦めがつくが、専門店で買ったものは、はずれでも中々諦められないものである。美味しくないなあと思いつつ、捨てるに捨てられず、色々試してみては期待を裏切られる。嫌気が差した頃には棚の奥にしまって忘れるか、あるいは遅すぎた決断を下す。こうした不確実性が、ネット通販に中々手を出せない人を生み出す理由の一つであろう。エンド・ユーザーに過ぎない一般消費者には、基本的にサンプルなどとは無縁であり、その事が取っ掛かりを掴むのがむつかしくしている。ティ・リストや茶葉、茶殻、茶液の写真がサイトに掲載されていれば、まだマシだが、それすら無い所も少なくない。
一方で試飲や茶葉の現物を見ることが出来る専門店にも欠点がないわけでもない。まず、最近は少なくなったが、大きな容器に入れられた紅茶の量り売り店の場合、茶葉の保存状態が疑わしい。コーヒーほどではないが、茶葉も保存には気を使うべきである。試飲においても、ある種の困難さがつきまとう。最近はテイスティング・ポットで淹れて、スプーンなどで紙コップに少量移したものを試供してくれる店が増えたが、お茶に使う水は汲み立て、沸かし立てではなくて、電気ポットで保温したお湯を再沸騰させて(時には再沸騰させずに)使うので、商品の魅力をうまく伝えてくれない場合がある。加えて、大抵の場合、試飲の際にわざわざ商品を封切するのではなく、試飲用のものを予め取り置いたものを使うので、茶葉の鮮度がイマイチである事もある。
試飲で「美味い」と思って買って帰る事は稀である。サンプルの茶葉の形や匂いをかいで、目星をつけたもの一、二点を試飲させてもらい、おおまかな特徴を掴む。水色や香り、味なども参考になるが、茶殻の残り香も参考点として大きい。良い物はやはり茶殻の香りも良い事が多い。要するに試飲の段階では“期待”というものに近い。これならと思ったものを買い、家で“試す”のである。所詮は素人、試飲しようがはずれを引く事は少なくない。淹れ方の巧拙もあろう。合う、合わないの問題もある。しかし、所詮は嗜好、趣向の品。最終的に愉しめればそれで良い。物は出会い、買うかは買い手の感次第。購入も含めて結局は遊びに近似するものなのだろう。