茶語「阿里山金萱」(TB)



*見やすさのために茶殻は量を減らして撮影

台湾茶の名称は法則性があるので、通り一遍覚えてしまうと分かりやすくて便利である。「阿里山金萱」の場合、「阿里山」は地名(生産地)、「金萱」はお茶の種類。はてなキーワードには「阿里山金萱種(ありさんきんせんちゃ)」と登録されているのだが、「ありさんきんせんちゃ」と読ませたいのなら「阿里山金萱“茶”」と表記すべきであろう。さらに付け加えるならば、「金萱種」は阿里山以外でも生産されているので、この表記と説明では少々語弊があろう。
この「金萱種」は「台湾十二号」の品種名で、比較的新しい品種のようである。「萱」には「かや・ケン」の読みしかないので、当て字であろう。確か本来の台湾の方の字は竹冠で「宣」部分も少し形が違うようだったが、意味するところは「乳香」。その名の通り、ヴァニラや練乳のような、実に甘い香りがするお茶である。身近なものでたとえるなら、不二家の飴菓子「ミルキー」であろうか。台湾の烏龍茶は総じて醗酵度が弱いせいか、緑茶の面影を残したものが多く、この「阿里山金萱」は九州の釜炒茶や玉緑茶の見られるような、爽快さと仄かな甘味に似た味わいを持ち親しみやすい。蓋し、「茶語」のシリーズでは一番万人受けするものであろう。
●熱湯一分一煎目

●熱湯三分三煎目

ご覧の通り、杯を重ねるごとに色が濃く出る。前回の「龍井」と同じく熱湯三分と書いてあるのだが、三分だと苦味が出過ぎるし、二煎目、三煎目が美味しくなくなる。十分に温めたポットか、カップで、一煎目は熱湯一分で淹れると色は薄いが、味はしっかりしているし、何より香りが格別である。茶葉の出が良いので、四煎目を愉しめる時もあり、五煎目となるとさすがに出がらしではあるが、色はそれなりについている。「茶語」のティ・バッグのシリーズでは一番出が良いのではなかろうか。先に記したように乳香が特徴的だが、甘い香りではなく、凍頂烏龍のようなスーッとする爽快な香りが強い場合もある。その場合、渋味が存外強く出るので注意。大抵の場合、カップよりはポットで淹れた方が美味しいのだが、何故かこの「阿里山金萱」はカップの方が美味しく淹れられた。単に我輩の淹れ方が下手な可能性も否定出来ないが、熱湯で十分に温めたコップで淹れる事をオススメしておこう。